兵庫県丹波市の県立柏原高校インターアクト部の1、2年生が、丹波市豪雨災害(2014年8月)で被災した同市市島町前山地区住民の体験や記憶、教訓を聞き取り、災害を知らない世代や地域の人たちへ伝える活動の第一歩を踏み出した。2日間にわたって同町下鴨阪自治会と同町谷上自治会の公民館を訪れ、それぞれ住民から聞き取り調査を実施。調査結果はデータベース化し、防災を啓発する新たな取り組みにつなげる。
谷上自治会には部員18人と、住民8人が参加。部員たちは、事前に葛野達也自治会長から借りた被災直後の地域の写真を見ながら質問内容を考え、調査に臨んだ。
住民1人に対し、部員2―3人のグループをつくり、部員らは主に災害発生前後の行動を中心に「何を持って避難したか」「どこから家の中に土砂が入ってきたか」「片付けはどのようにしたか」「元の生活に戻るまでにどれくらいかかったか」などの質問を投げかけ、熱心にメモを取っていた。
住民らは部員の質問に対し、時にイメージしやすいように絵を描きながら説明。「電気も止まり、携帯も使えない。真っ暗な家の中から、いなびかりで外の様子を確認していた」「片付けの際に、ボランティアさんは非常にありがたかった。ただ、いるもの、いらないものを判断する必要があった。使えなくなったけれど、思い出の詰まったものもある。ゆっくり思案する時間がなかった」などと答えていた。
同じ市内でも市島から離れた地域に住んでいる副部長(2年)は、「市島でこんな災害があったことは正直、覚えていない」という。「片付け自体は5カ月ぐらいで終わったけれど、今でも雨が降ると落ち着いて寝られないという話が印象に残った。目に見えない傷がまだ残っているんだなと感じた。自分が住む地域でも災害が起きる可能性があることを実感した」と話した。
葛野自治会長は、「『かわいそう』『大変でしたね』ではなく、自分たちの命を守るためにどうすればよいのかという、『これから』につなげてほしい」と期待していた。
同部とは別に、同校「知の探究コース」の3年生が、災害の前兆現象について書かれた学術誌の内容を、同町下鴨阪、谷上自治会住民への聞き取り調査から検証する試みを行った。この発表を聞いた同部顧問の久保哲成教諭が、市豪雨災害を教訓にした防災への取り組みが部で引き継げないかと考えた。「授業は単年度で終わるが、長期的に次の学年へと引き継いでいけるのは部の強み」と話す。同部では過去、在住外国人向けに紙芝居で防災を啓発する活動もしていた。