炭焼きを伝承 細見寛さん(丹波市)

2021.02.07
たんばのひと

細見寛さん

里山の風景守りたい

戦後、冬場の仕事として丹波市春日町大路地区、中でも深い谷にある野瀬集落内で盛んに行われていたという炭焼き。当時は組合が組織され、炭の保管庫もあった。時代とともに製炭業が衰退する中、定年退職した5年前から、同じ集落の長老に一から技術を教わっている。その長老も昨年末で“勇退”、集落で唯一の存在となった。地元の大路小学校の児童たちに伝統文化を伝える活動もしている。

定年退職後は、自宅の納屋を改装し、そば屋でも開こうかと考えていた時期もあったという。しかし、忙しくすると、先祖から引き継いだ田畑や山林を放置してしまうことになるのではないかと思いとどまった。「刈った草を肥料にしたり、伐採した木を炭にして使ったりする、昔ながらの里山の風景を維持したい思いが強かった」と語る。

家向かいの山裾にある、崩れかけていた炭窯を、経験者らの教えを請いながら復元。伐採の仕方、木の名前や炭に適しているか否かなど、一から教わった。「灰になっていなければよし、という感覚でやっています。いまだに分からないことばかり」と笑う。12月になると、炭にする木を計画的に伐採。1―3月のシーズンに炭重量で500キロほどを焼く。地域のイベントで販売したり、炭火焼きにこだわる飲食店に卸したりしている。

家では3人の孫のおじいさん。「昔ながらの里山の暮らしを見せていることが、孫たちの将来に、何らかのよい影響を与えられたら」と思っている。今年、一番上の孫が、授業で炭焼きを教わりに来ているという。「なんか照れくさいけど、3人目の孫が来るまでは頑張らないと」と表情を崩した。65歳。

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