丹波木綿の伝統後世に
閉校になった丹波篠山市の雲部小学校の校舎を活用した「里山工房くもべ」(西本荘)内に作業場を構え、兵庫県伝統工芸品で、江戸後期から伝わる「丹波木綿」を生かした着物や洋服の制作などに取り組むグループ「丹波木綿の里くもべ」の代表を務める。
篠山鳳鳴高校時代、美術部に所属。20代半ばで結婚し、転勤族だった夫を支え、全国各地を転々とした。家事の合間を縫いながら「自分を発散させることができる」と趣味で油絵を描き続けていた。
約25年前に古里へ帰郷。リポーターを務めた市広報紙のコーナーの取材で、丹波木綿生産を復活させた伝承施設「創作館」(同市栗柄)を初めて訪れた。3人の高齢女性が「昔ながらの手法で糸を紡がれていた。感動しました」と話す。
すぐさま、同館で作業する地元の女性たちに弟子入りを志願。師と仰ぐ「おばあちゃん」たちから10年以上、技術を学んだ。その後、「自分らしい作品を作りながら伝統を伝えていきたい」と“独立”。6年ほど前に同市内の女性4人で同グループを立ち上げた。
糸紡ぎから地元産の植物を使った草木染め、手織りまで全て手作業の伝統製法で織った布を使い、着物やコート、ブラウスなど、懐かしさと新しさを融合させた作品制作に励んでいる。
かつて農閑期の冬に、女性が家族のために糸を紡いで染め、織っていた丹波木綿。「『織る』ことは『生きる』こと。布から当時の人たちの思いや生活が見えてくる」と語る。「丹波木綿が自宅に眠っているという方から、布にまつわる話の聞き取りも進めていければ。伝統と記憶を後世に残していきたい」