創建時不詳だが、 元禄時代に安芸の宮島の厳島神社から分霊を遷座されたものである。 祭神は宗像三女神の1人、 弁財天としても知られる市杵嶋姫命である。 上牧の正法寺の近くの山裾の小さな森の中に佇む、 こぢんまりとした社殿である。 社殿への入り口の右側に、 かなり大きな石碑が立っている。 厳島神社由緒の文字が目に入る。 小さなお宮にこんな立派な石碑。 地域の人々の思い入れが偲ばれる。
神社正面の向背の、 狭い空間に竜の彫り物がまず目に入る。 宝珠を真ん中に首を左下に向けている。 目の後方を赤く染め、 黒く見える髭を伸ばしている。 中井一統の典型的な処方だ。 竜の左の空間には、 唐獅子が1頭迫力ある動きを見せている。 竜の上部には獅子噛が文字どおり、 下の梁に噛みついている。 兎の毛通しの海亀の彫り物は素晴らしいの一言だ。 脇障子の彫刻もいい。 天保年間 (1830年代) の、 6代目中井権次正貞の垢抜けした作品である。
元高校教諭 岸名経夫