多可町に向かう小野尻峠の左手前を入り、 しばらく行ってまた左手の山裾をめざす。 なかなか大きな拝殿が迎えてくれる。 境内摂社として、 恵比寿、 金毘羅、 愛宕、 天満、 そして山神社が左右に鎮座している。 地域住民の信仰の厚さを表している。
この神社の本殿と拝殿に立派な彫り物がある。 本殿向背には、 躍動感溢れる竜の姿、 そのすぐ上には大きな獅子噛が下の梁に噛みついている。 兎の毛通しには鳳凰が大きく羽を広げている。 木鼻の唐獅子と獏、 肘木鼻には麒麟も見える。 脇障子も牡丹と唐獅子だ。 他に小さな彫り物も散見される。 拝殿の彫り物は多くはないが、 向背には左上向きの立派な竜、 迫力ある牡丹に唐獅子が彫られている。 この彫り物は1911年ごろの、 8代目中井正胤の作である。 本殿は6代目中井正貞の作。 残念なのは本殿の竜の目と尾が欠け、 鳳凰も頭がない。 彫り物への配慮もなく本殿と幣殿を繋いだのだろう。
元高校教諭 岸名経夫