改組8回目となる今年度の日展で兵庫県丹波市の女性2人が入選した。書で酒井礼子さん(71)=同市山南町=が初入選、彫刻で前田桂子さん(69)=同市氷上町=が5度目の入選を果たした。2人は、「指導者のおかげ」と感謝している。8518点の応募があり、入選率は約13%。
酒井さんの作品は、「その子二十(はたち)」(調和体)。与謝野晶子の短歌2首「櫛にながるる黒髪のおごりの春の美しきかな」「海恋し潮の遠なりかぞえては少女となりし父母の家」を、二六(約60センチ×180センチ)の和紙に書いた。
33歳から10年余り、子どもと一緒に谷口美智子さん(氷上町)の教室で学んだ。退職後、改めて打ち込むにあたり、漢字か仮名かどちらかを選び、別の指導者につくよう助言を受けた。
そんな時に丹波市展の公開審査会の会場で、改組5回目の日展で入選した荻野亮子さん(同市市島町)と出会った。聴衆は2人きりで、初対面ながら雑談する中で仮名の勉強をしたいと伝えたところ「私のところに来る?」と誘ってもらい、荻野さんの師、青丹会の大庭松翠さん(奈良県天理市)の社中で学ぶ道が開けた。
万葉仮名は荻野さんに、誰もが読める調和体の仮名は大庭さんに習っている。大庭さんとは「手本」を送ってもらい、習作を返送して添削してもらう通信教育。1回につき7、8枚書き、週に2回ペースで送る。入選作は、合格が出るまで5カ月ほど取り組んだ。
「私はまねしかできない。大庭先生のお手本が立派だった。『前回より良くなった』と褒めて伸ばして下さった。褒められることが励みになった。谷口先生に基礎を教わり、荻野先生に道をつけてもらったおかげ」と感謝する。
多趣味で、書道に当てるのは週に2度、1回4時間ほど。「作品づくりはしんどいけれど、集中し、嫌なことを忘れ、雑念から離れられるのが、書道の魅力」と言う。「ひどくはよう頑張れないけれど、体力があるうちに一つひとつ書きたい。新しいお手本が届くのが楽しみ」とほほ笑んだ。
前田さんの作品は、女性の立像「未来(ゆめ)に向かって」(台込みで180センチ)。モチーフは、高校3年の孫娘。目標に向かって学業に打ち込む姿を見て、「彼女の内から発するものを表現したい」意欲に駆られ、表情と立ち姿に込めた。
改組3回目の日展に初挑戦で初入選。以来、ここ6年で5回入選。5回のうち4回は、4人の孫を順に作品にした。
「自分でもよくできた手応えがあったし、家族も、これまでで一番良いと言ってくれた。応援する気持ちで作った孫も、喜んでくれた」と表情を崩す。
丹波彫刻会の会員で、磯尾柏里さんの教えを受けている。「的確な助言を頂いて、しっくりこないところを直すとぐっと作品が良くなった」と感謝する。
「見たものを、見たまんま作るのが精いっぱいなのは変わらないけれど、上達が少しなりとも感じられた。日展に出す、出さないにかかわらず、作りたいものはたくさんある。男性の立像やトルソー(胴部像)を作りたい」と、創作意欲を燃やしている。