国道312号、立野の南東500ほどの山裾の静寂な神域に鎮座する神社。創建時不詳。祭神は誉田別命(応神天皇)。社殿は拝殿、幣殿、そして本殿と連なり、本殿は三間社流れ造、拝殿は唐破風入母屋造の立派なものである。
拝殿の兎の毛通しには、鳳凰が羽を広げ、木鼻の左右には獏がいる。本殿にある、この神社の彫り物の特徴は、中井権次一統のそれの基幹から成り立っていることだ。すなわち、向背の3はゆうに超える立体感この上ない迫力満点の左方向を睨みつけている竜。木鼻の左右の唐獅子と獏、これもかなり大きな造りである。左右後方に見える脇障子には、向かって右に中国の神仙説話の仙人、左に直立したような鳳凰が彫られているだけだ。どの彫り物も160年くらい前の物にもかかわらず、損傷が少しもない。中井権次橘正貞、弟の清次良正用、その相方である久須真助正実の銘が竜の裏面にある。
元高校教諭 岸名経夫