一乗山経王寺(豊岡市出石町下谷)

2016.03.02
中井一統特集

 出石高校を横に見て、有子山麓のこの寺院に近づく。お城の隅櫓を彷彿とさせる鐘楼がまず目に入る。さらに、重厚な山門が迎えてくれる。往古は真言宗であったが、永禄年間(1560年代前後)に日蓮宗となり現在の経王寺となった。出石藩累代の菩提寺となっている名刹である。
 客殿の造作の素晴らしさには吃驚である。格天井もそうだが、なんといっても、本殿前部頭上に渡された欅の梁の大きさ、長さには度肝を抜かれた。向拝中央に巨大な竜がしつらえられている。素晴らしい飴色に変化している。大きな宝珠を中央に握りしめ、いらかを立てて躍動感あふれるものだ。4はありそうに見える。梁の彫り物も手が込んでいる。すぐ下の唐獅子はおとなしい風情で上の竜と絶妙の調和を意識したものだろうか。ここの経王寺庭園は池泉観賞式庭園で豊かな水が織りなす心平穏を醸し出してくれる。境内に咲く夏椿も由緒あるものだ。正貞の大作。
元高校教諭 岸名経夫

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