狭くて曲がりくねった道を登って行く。檀家衆によって築かれた城壁を思わせる石垣に囲まれた重厚な寺院に辿りつく。高野山真言宗の古刹。天平年間(740年代前後)、行基菩薩の開基。
客殿向拝を見上げる。中央には竜ではなくて、3頭の唐獅子が乱舞している。左右の木鼻にはそれぞれ、阿吽の呼吸の、身体をよじる様にした内向きの麒麟と獏がいる(正貞作)。
本殿に入って目を見張った。中央欄間に金色の阿吽の竜と2人の天女の舞姿だ。欅に着色された中井一統の彫り物は初めてだ。天才正貞が晩年、頭に閃いたものを具現化したものなのだろう。水銀アマルガムを塗り、熱を加えると水銀だけが蒸発し、あとに金が残る。この上に着色する。往時からある技法と聞いた。ともあれ優美にして迫力満点である。他に弥勒堂の竜と獏、山門にも唐獅子と獏。豊岡の彫物師秋塚治助広貞の手による。正貞は彼とコラボを時々やっている。
元高校教諭 岸名経夫