市島町北奥の山裾に佇む曹洞宗の古刹。本尊聖観世音菩薩。古くは天台宗の末寺だったが、氷上町の円通寺によって中興され、天和年間(1681-1684)に曹洞宗に改められた。その後火災で焼失したが、天保10年再建され現在に至る。
本堂内中央、須弥壇前の梁に常時竜の刺繍をした幕が掛かっており、この背後に垢抜けした彫り物が設えられている。梁中央の空間に桐の花と葉に囲まれて、躍動感ある、今にも飛び出しそうな鳳凰がいる。また須弥壇の中央上部には、雲の中を飛翔する、くちばしの色も鮮やかに足をぴんと広げた鶴。さらに、木鼻の左右には、定番とは異なって唐獅子のいない象だけの彫り物がある。鳳凰の彫り物の裏面に、彫り物師、栢原町住、中井権次橘正貞彫刻の銘が墨書されている。外陣欄間には少し新しい趣の牡丹と4頭の唐獅子が見える。また本殿には全く新しい時代の彫り物も散見される。
中井権次研究家 岸名経夫