石の鳥居を潜りさらに3段になった石の階段を登って行く。登った右手に差し渡し12とも言われる、竹で支えられた姫小松(五葉松の一種)が目に入る。手入れがよく行き届いている。天然記念物になっている。中央に社殿が鎮座する。小振りではあるが立派な趣がある。
中央向拝にせまい梁間ながら竜の彫り物が設えられている。珍しく目が白く、宝珠も中央ではなく右後方にある。いらかもやや鋭さに欠ける。しかし定番の木鼻の唐獅子と獏は迫力があり、手挟みの菊と鷹、持ち送りの牡丹も垢抜けしたものだ。本殿側面の上部には、なかなか凝った小さな彫り物が見え、その中に飛竜も見える。脇障子2面にはそれぞれ迫力ある竜虎の姿、もう1カ所の馬に乗った仙人の脇障子の右下には、小さく屋号をのせた青龍軒正貞の銘があり、中井「権次」とまだ名乗っていなかった19世紀初頭の彫り物と考えられる。
中井権次研究家 岸名経夫