栢野集落を流れる小川を渡った所に鎮座する古い神社。神社は清掃が行き届いて静謐な雰囲気である。立派な鳥居が迎えてくれる。両部鳥居であり、神社の銘を表した扁額の上には唐破風の屋根がついている。左前方には巨岩が見える。往古、磐座信仰の対象であった大岩であろう。さらに進むと、本殿がある。比較的コンパクトだが、銅板葺のどっしりとした佇まいである。手前には特別保護建造物と彫られた碑が建っている。
本殿向拝を眺める。梁間は狭いが、それゆえ、彫刻を施された龍全体が前方に押し出されてきているように迫力がある。銅線の細い髭を左右に伸ばし、左前方を睨んでいる。いらかの数は少ないが迫力がある。木鼻は定番の唐獅子と獏であり、左の脇障子には松と竹と山鳥、右のそれには、猿を狙う鷹だ。向拝の彫り物と脇障子のそれは、1850年代半ば過ぎの6代目中井権次正貞、7代目正次の合作と思われる。
中井権次研究家 岸名経夫