氷上町桟敷地区から由良地区へ入って行く、小川の右側の平地に佇む神社である。創建時不詳。祭神は大物主神。今の社殿は正徳2年(1712)頃と思われるが、何しろ風化が激しい。
本殿上部の太い梁の上の菊の御紋の上の狭い梁間に、とぐろを巻いたような竜が見える。誠に窮屈そうな竜だ。宝珠も脇にやり、いらかも少ないが、躍動感はなかなかのものである。明治維新後、部分的改修をした時の、8代目の正胤の竜であり、木鼻には唐獅子と象の彫り物があり、手挟みには牡丹の花が咲いている。向拝中央には日吉神社のお使いの猿が見えるのが面白い。社殿の左と右側面の上部には、大きな虎が彫られており、さらに、裏面の隅には山犬が辺りを覗っている。上部尾垂木からは、下方を覗う総数14体の竜が辺り一面を威嚇している。古い部分の彫刻は中井一統以前の彫り物師群で、2者が時代を隔てて彫ったものだろう。
中井権次研究家 岸名経夫