祭神は天児屋根の命、大市姫命の二柱。神社そのものは比較的新しく江戸時代で市場大明神と称した。道路沿いの平地に佇む神社で、常時市が開かれ、昔から大市姫命にふさわしく市場千軒の名が残っていた。正否はともかく、この女神は交易を差配する巫女ではなかったかと思考するものである。小聖神社と同様円墳が近くにあり、鉄刀、勾玉、金環などが出土している。低い築山が社の前にあり、中の島と称し、元の本殿跡である。なお本殿内には、二神の立像と坐像が安置されている。
本殿向拝には目抜きに左上方を睨む竜が、大きく口をあけ、目じりを赤く、上向きの宝珠を中央に置いて、邪気を威嚇している。そのすぐ上には司馬温公の子どもの命は何物にも代えがたいという甕割の説話の図。木鼻の唐獅子と象、手挟みの松と鷹もいい。昭和11年大戦前、素材を欅から檜に変えざるをえなかった9代目中井権次貞胤の苦心の力作だ。
中井権次研究家 岸名経夫