技術と精神性 継承へ
国宝の清水寺本堂、出雲大社本殿などの屋根に見られる檜皮葺の材料となるヒノキの樹皮を採取する職人、原皮師。文化庁認定の選定保存技術保持者で、「全国社寺等屋根工事技術保存会」(約200人)の会長も務める。昨年12月、丹波市山南町上久下地区で継承されている1300年以上の歴史を持つ日本独特の伝統工法、檜皮葺を含む「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、「これからも高い技術を次代へと継承し、思いを込めて仕事と向き合うことが、より良い結果につながるという、精神性も伝えていきたい」。
樹齢80年以上のヒノキの立木を選び、木製のへらを使って木肌を傷つけないように樹皮をはがす。「半日、10―20メートルほどの樹上にいることも。高所作業に怖さを感じますが、無事に皮をむききって地上に降りたときの達成感がたまらない」
篠山産業高校を卒業後、2代続く原皮師の家業を継ぐため、父・豊さんのもとで修業。「厳しい人で、なかなか一人前として認めてくれず、長い間この仕事を好きにはなれませんでしたが、23歳で結婚。これを契機に『この道で生きていこう』と腹をくくりました」
「私が仕事を始めた頃は従事者が少なくて、業界は風前の灯状態」。これを解消するべく、国の研修制度ができた。「制度が充実してきたおかげで後継者が育ってきた。息子(隼矢さん)も7年前から後を継いでくれている」と喜ぶ一方、「安定的な仕事の確保が課題。せっかく増えた職人が活躍できるよう、将来にわたって檜皮葺の建物を守り続けてほしい」。56歳。