写真・向拝の竜と力神
神社前方に久谷駅を望み、国道178号線を跨ぎ南側の山裾に鎮座する神社。すぐ東は余部である。石造りの鳥居を潜りぬけ、緑の苔むす参道を少し登った所に社殿がある。創建時は不詳、祭神は応神天皇。元、蓮台山上に鎮座していたものを、応永21年(1414)に現在地へ遷座した。今の社殿は嘉永5年(1858)に改築された。社殿は全体が覆われており風化が無く、こけら葺きの立派なものだ。
拝殿向拝はやや幅が狭いとも思えるが目抜の躍動的な竜が素晴らしい。左下前方を睨み、宝珠を真中に、鋭い眼の後ろには朱色が鮮やかである。“いらか”の立ち様が実にいい。すぐ上に力神が屋根を支え、さらに屋根の上に獅子噛が噛み付いている。木鼻の唐獅子、獏は言うに及ばず、鳳凰の躍動感、社殿上部の彫り物もいい。脇障子の天女が竜を足下にしている図は珍しい。六代目丹州栢原中井権次橘正貞、晩年の傑作である。
中井権次研究家 岸名経夫