兵庫県の丹波篠山市立中央図書館(西吹)で、市史編さん事業の中で市民が寄贈した貴重な資料を展示する「第1回市史編さん新発見・新収蔵資料展」が開かれている。初回は、同市畑地区和田の石田家から寄贈された「石田家文書」の一部を展示。幕末から近代にかけての動乱期の丹波篠山の社会情勢や生活の様子を今に伝えている。今後も定期的に展示を行っていく。同図書館は、「大河ドラマの登場人物ではない、丹波篠山の人が記した文書。歴史を見る目が変わります」と来場を呼び掛けている。6月17日まで。
石田家は近世に和田村庄屋、畑組大庄屋、郡取締を務め、近代には村長などを歴任。昨年5月、石田家に伝わる4100点超の資料が市に寄贈された。
今回展示しているのは、▽畑組11カ村を取り巻く地形と位置関係などを示した略地図「丹波多紀郡第九区村々略図」(明治年間)▽幕末、長州藩が京都・御所の周辺で幕府軍と武力衝突を起こした「禁門の変」時、藩主に同行して事変を目の当たりにした石田又左衛門の日記「殿様御供致シ在京中日記」(元治元年)▽藩が和田村に出した年貢額に関する「申年免定 里畑村高之内和田村」(万延元年)―の一部。
又左衛門の日記では、「朝食をとっていたところ、鉄砲の撃ち合いが始まった」「上を下への大混乱となり逃げだした」「人々の泣き声は四時間ばかりもやむことがなかった」など、禁門の変時、市井の人々がどのような状況だったのかが見て取れる。
神戸大学の松本充弘特命助教は、「石田家は地域社会の公共的な役割を担ってきたことに対する自覚と自負があったと思われる。現在の私たちが資料を目にすることができるのは先人の努力の賜物」とし、「村が責任を持ち、年貢の上納や法令の浸透を担う江戸時代のシステムの中で作成された文書の豊かさに触れてください」とコメントしている。
市は市制20周年と市名変更を機に、市史編さん事業に着手。2029年度の刊行を目指しており、江戸時代以前に書かれた書き物や、明治―昭和ごろのはがきや日記、連隊や鉄道にまつわる資料や写真など、各家に伝わる古い資料や写真などを探している。