調べてみたら市内最古 全国巡礼の供養塔 「貴重と分かりびっくり」

2023.01.28
地域歴史

ひっそりと山裾にたたずむ供養塔=兵庫県丹波市市島町下竹田で

調べてみたら市内最古―。兵庫県丹波市市島町竹田地区の歴史を掘り起こすグループ「竹田温故の会」の調査で、同町下竹田の山裾にある1693年(元禄6)建立の石碑「六十六部廻国供養塔」が、同市内で確認されている同様の供養塔の中で最古であることが分かった。六十六部廻国は古くに行われていた霊場巡りで、全国66カ国の霊場を各国1カ所ずつ巡り、法華経を1部ずつ納めるというもの。地元でも石碑の存在は知られていたが、詳細は分かっていなかった。石碑の願主は竹田村の僧侶の名が刻まれており、この僧侶の満願を記念したか、道標の役割を持たせるためなどに建立したと考えられるという。同会のアドバイザーで、市文化財保護審議会委員の山内順子さんによると、全国的にも建立年代が古い方で、他県では、この石碑よりも新しく建てられたものが文化財に指定されている例もあるという。

台座を含めると高さ2メートルほど。獣害防護柵の内側にあり、旧塩津峠沿いに鎮座している。

石碑は正面に「南無妙法蓮華経」と刻まれている。向かって右側面に「丹州氷上郡竹田村」の「日得」という僧侶の名が願主として彫られている。山内さんによると、「日蓮大菩薩」などと刻まれている個所もあることなどから、「日得」は日蓮宗の僧侶だと推測できるという。

左側面にも漢文があり、要約すると、「日本中に、法華経六十六部などを奉納して歩き、偽りない心で供養を営むことは、四海泰平、国家安寧、仏法の広宣流布に寄与すること」「仏教に縁のある人も無い人も、全ての人々の苦しみを取り除き、安楽を与えることができる」という意味。

同様の石碑は、市内では13基が見つかっている。建立年が刻まれていないものを別にすると、いずれも1700―1800年代に建立されている。有名な西国三十三所や四国八十八所の霊場巡りと異なり、納経する霊場が固定されていなかったことが特徴。

同会メンバーの土田富夫さん(76)と福田勝二さん(80)の提案で、同会で調査した。土田さんは「300年以上前に建立されたものが、ひっそりと眠っていた。表に出すことができてうれしい」と笑顔。福田さんは「元禄と刻んであるので、古い石碑という認識はあったが、こんなに貴重な物とは」と驚いていた。

山内さんは「地域の人が、身近なものを調べた成果が出た。まだまだ埋もれた歴史があるのでは」と期待している。

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