イラストレーターで、嵯峨美術大学特任講師の池上典衣さん(39)=兵庫県丹波市氷上町石生=が3月6日まで、京都市内の人気ギャラリーで、個展「うずまきアパートメント」を開く。自作物語の登場人物を「メディウムはがし刷り」という版画技法で描いたイラストを出展。1本1本の線は、盛り上がっており、デジタル時代にアナログでしかできない表現に挑んだ。「質感、空間デザインを含め見てもらえれば」と来場を呼び掛けている。
異世界の古い洋館アパート「うずまきアパート」に住む“住人”10人を、10編の物語とともに描いた。“住人”は、擬人化した鳥やパンダ、コウモリ、犬のほか、人っぽい顔立ちをした「人間風」のものも。作品サイズは39・5センチ×27センチ。
例えば、口琴を鳴らすのが好きな“住人”「トレス」の物語は、「いっそのこと居酒屋へ出頭し、つまみにでもなってしまおうかと、自暴自棄になっていたナマコがアパート近くを通りかかり、口琴のビヨーンとしたとぼけた音色を聞き、心境が変化した」という内容で、口琴を演奏する「トレス」を描いている。
10点の作品は額装し、それぞれにカーテンと鍵を付け、アパートの個室を表現している。
作品は一見すると平面だが、線は版。隆起した線、メディウム、アクリル絵の具、メディウムと、4層構造になっている。
池上さんは兵庫県立柏原高校時代、美術部に所属。京都市立芸大でイラストを学び、同大学院修了後、東京都内の印刷会社や壁画の会社で勤務した。個展は東京時代の2010年に開いて以来。6歳と9歳の子がおり、制作を抑えていたが、大学生を指導する中で刺激を受け、「子どもが大きくなるのを待っていたら制作しなくなるだろう」と、個展開催を決めた。「丁寧に作り」(池上さん)、10点を仕上げるのに1年かかったという。
ポスター、装画、ロゴなどが得意。市内でも認定こども園のバスのデザインや、丹波新聞元日号の「いきものすごろく」なども手掛けた。
個展会場は、恵文社一乗寺店内ギャラリーアンフェール(京都市左京区一乗寺払殿町10、午前11時―午後7時、最終日は午後4時)。