今田町の兵庫陶芸美術館で開催中の「北大路魯山人展」を見に行った。魯山人の真骨頂である食器類をながめながら、「食器は料理の着物」という魯山人の姿勢を改めて思った。食器は料理を引き立たせるためのものであると言い、食のための器を作った魯山人。多芸多才な芸術家として知られるが、何よりも美食家だった。▼そんな魯山人の舌を満足させたのは、新鮮な素材だった。大根でも、古いものはいくら名料理人でもどうにもならないが、今畑から抜いてきた大根は、おろしにしようが、煮て食べようが、何をしてもうまい。「新鮮に勝る美味なし」と喝破した。▼本紙コラム「てぃーたいむ」の筆者、古谷暁子さんが最近、丹波の味について書いていた。丹波に移り住み、身近にあるヨモギや山椒、タケノコなど新鮮で旬の素材が並ぶ食卓に、本当の贅沢を見つけたという内容だった。丹波のように、家のそばに畑がある農村部は、新鮮な素材に恵まれている。▼美味をほめていう言葉に「醍醐味」がある。醍醐とは「乳を精製して得られる最も美味なるもの」(広辞苑)で、濃厚で甘い液体の醍醐を飲めば万病が治るともいわれる。そんな醍醐のような味が「醍醐味」というわけ。▼新鮮な素材はおいしいだけでなく、体にもいい。丹波の味はまさに醍醐味である。 (Y)