兵庫県丹波市氷上町成松のミニシアター「ヱビスシネマ。」など同市内3会場で11月3―16日の2週間、「丹波国際映画祭」(同実行委員会主催)が初めて開催される。「人」と「自然」をテーマに、いずれも過去に同シアターで公開し、観客からのリクエストが多かった国内外12作品をノミネート作品として上映。観客の投票によりグランプリを決める。同シアターを営む映画監督で、実行委代表の近兼拓史さん(61)によると、全国的にもまれという「観客参加型」の映画祭。「文化、産業として、丹波市に映画を根付かせたい」と開催に至った思いを語る。
3―9日までは同シアターで、10、11日は同シアターのほか、春日文化ホール(春日町黒井)とやまなみホール(山南町谷川)でノミネート作品を上映する。前売り観賞券を購入すれば投票権が得られ、グランプリにふさわしい作品と感想を絵馬に書き、会場にある該当作品のポスターのそばにつるしていく。
10日に春日文化ホールで前夜祭を開き、近兼さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組の公開収録や、ノミネートされた映画監督のビデオメッセージなどを披露。11日に同ホールで受賞式を開く。観客の感想を反映させた賞も3、4つ程度設ける。
受賞作品は、12日は3会場で、13日以降は同シアターでのみ上映する。期間中、来丹する映画監督もいる。近兼さんは「無名の監督や出演者が賞を取る『大番狂わせ』も考えられる」と話す。
ノミネート作品は、「銀幕の詩」「ヒゲの校長」といった丹波市にゆかりのある作品から、「かがみの孤城」「プリキュアオールスターズF」のアニメ、「MINAMATA」「RRR」など高評価を得る海外作品まで、多彩なラインアップがそろう。
ロシアの侵攻を受けるウクライナにエールを送りたいとの思いから、同国のアニメ映画「ストールンプリンセス―キーウの王女とルスラン」も上映する。収益の一部は同国へ寄付する。
丹波市内にはかつて10軒の映画館があったが、1970年には全て閉館に。近兼さんは、丹波の地に再び映画の灯をともし、景観や風情を世界に発信しながら町おこしにつなげたいと、構想を温めてきた。コロナ禍が落ち着き、賛同する映画監督や市内外の有志ら15人ほどで実行委を立ち上げた。
近兼さんは「毎年開催し、ゆくゆくは市内6町6会場で開きたい。海外からもお客さまを呼べる大会にしたい。映画監督らに『また丹波に来たい』と思ってもらい、毎日どこかで映画の撮影をしているようなまちになれば。そうすれば人流も増える」と青写真を描く。
前売り券は同シアターや春日文化ホール、純喫茶国領(春日町国領)などで購入できる。投票権付きチケットは、6作品鑑賞でき、前売り(10日まで発売)一般1万円、60歳以上、高校生以下、障害者手帳を持っている人は5500円。期間中に使えなかった回数分は同シアターで1年間使用できる。
1作品鑑賞できる当日入場券は、一般2000円、シニア、高校生以下などは1200円(前売り各100円引き)。