「丹波国際映画祭」実行委員長 近兼拓史さん(西宮市)

2023.11.19
たんばのひと

近兼拓史さん

「『苦しかった』は勝利宣言」

「丹波を映画の町にしたい」と夢を掲げ、第1回「丹波国際映画祭」を開催した。支配人を務める映画館「ヱビスシネマ。」(丹波市氷上町成松)など3会場で12作品を上映。来場者投票でグランプリを決め、初代は「ヒゲの校長」が受賞した。

丹波市を舞台に2017年、自身の3作目となる映画「恐竜の詩」を撮影。その時の出会いがきっかけとなり、元暴力団事務所の建物を買い取って映画館として復活させることに。その様子を撮影して、人情コメディーとして映画化しつつ、2021年に市内で約50年ぶりの復活映画館となる「ヱビスシネマ。」をオープンした。作品「銀幕の詩」は昨年完成し、全国で巡回上映している。

国立大学を卒業目前に中退し、プロバイクレーサーに。23歳の時にレースで大事故に遭い、社会復帰に2年半かかった。入院中に書いた体験記がきっかけでライターの仕事を始め、カメラマン、ラジオパーソナリティー、映画監督と活動を広げてきた。

「やりかけたこと、口に出したことは最後までやる」。温和な笑顔の下に不屈の精神。「苦しいとは言うなと父に言われていた。『苦しい』は泣き言だが、『苦しかった』は、乗り越えた勝利宣言になる」

日本映画監督協会に所属する500人のうち、映画館を持っているのは一人という。「コロナ禍に映画館を作り、業界の“希望の星”になってしまった。後には引けない」

ロケ地としての産業化を含めた映画でのまちおこしと、「丹波からアカデミー賞を取れる監督を育てる」という、2つの大きな夢がある。神戸市長田区出身。61歳。

関連記事