兵庫県丹波市出身で、漫画やアニメ、ゲームの「2次元」の世界を、舞台やミュージカルの「3次元」の世界で再現する「2・5次元俳優」として活躍している新木宏典(あらきひろふみ)さん(40)のファンが、丹波の魅力を紹介する新木さんのフォトブック「”新”発見 丹波ガイド」に掲載されているスポットに次々と訪れている。ゆかりの地を訪問する”聖地巡礼”のお供としてファンの間で定番化している、市のマスコットキャラクター「ちーたん」のマスコット人形の売り上げが急増。中には全スポットを巡ったファンもいるという。関係者たちは反響の大きさに「ありがたい」と喜び、「ぜひ、丹波市初の観光大使に」と熱望する。
フォトブックは、新木さんが40歳を迎えた節目を記念し、昨年7月31日に発売。市観光協会がロケに協力した。丹波の「体験と観光」「食」「お買い物」「宿」のテーマに分け、28カ所を紹介。新木さんが地元を満喫する様子を掲載している。
巻末には、「この一冊を手に丹波に遊びに行ってほしい。僕の知らない丹波の魅力も、ぜひとも見つけて広めていただきたい」というメッセージを寄せている。
◆通販サイトの売り上げ急増 人気は市のマスコットキャラ人形
同観光協会のウェブショッピングサイト「たんば丹波まごころストアー」の売り上げは、フォトブック発売前と比較すると、20―30倍に急増。中でも、ちーたんマスコットは、一昨年は3個売れただけだったが、昨年は8―10月だけで37個が売れた。X(旧ツイッター)やインスタグラムで「新発見丹波ガイド」のハッシュタグを付けて検索すると、各スポットでちーたん人形と一緒に写真を撮ったファンの投稿が見られる。ちーたんをあしらったエコバッグやクリアファイルもよく売れている。
同観光協会などがフォトブックの撮影写真などを生かして製作し、新木さんが表紙を飾る市の観光ガイドブック「陽だまり丹波めぐり」は、市内の観光案内所に計1万部を置いたところ、わずか1カ月ほどで7000部が出た。
フォトブック発売に加え、新木さんは昨年8月6日の「SPLASH!!丹波!!」、10月15日の「織田まつり」と、同市で開かれたイベントにゲストで登場。ファンが丹波市に足を運ぶ”フィーバー”に拍車をかけた。フォトブックに掲載された複数の事業者によると、大阪などで新木さんが出演する公演があった際に同市まで足を延ばすファンが多いという。
いずれもフォトブックに掲載されている、印刷業「廣運舘活版所」(同市柏原町)の菊本裕三代表によると、掲載前と掲載後の売り上げを比較すると、プラスになっているという。焼き肉店「グルメリア但馬市島店」(同市市島町)には沖縄から訪れたファンもいた。丹波大納言小豆を味わえる「あずき工房やなぎた」(同市春日町)の柳田明子代表は「丹波を回ってもらう良いきっかけになっている。うれしい」と歓迎する。
◆ファンは礼儀正しく 住民との心温まる交流も
丹波市観光協会の担当者によると、「礼儀正しい人が多い。悪い人は見聞きしたことがない」という。また、キャリーバッグを転がすファンを見て、地元住民が近くの観光地まで案内するケースもあったといい、交流も生まれている。「地元の方からファンの移動手段や荷物の置き場を求める声があった。対策しなければ」と話す。
さらに「公演で忙しい合間を縫ってスプラッシュや織田まつりに駆け付けてくれた。ふるさとにかける情熱を感じる。観光大使としてうってつけの人では」と、就任に期待している。