NHKの朝ドラ「てっぱん」を、前の「ゲゲゲの女房」に劣らず熱心に観ている。大阪制作に通例の人情ものの域を出て、なかなかに面白い。まず、主役の瀧本美織が良い。尾道から大阪に出て鰹節屋で働く「あかり」の、喜怒哀楽を真直ぐに出す性格を新人離れした演技でこなす。▼それから、「この人がいるからこそ」と言えるほどの第2主役、富司純子。昔、1人娘に家出され、その形見の娘、つまり孫であるあかりと18年経って初めて会い、「大家と下宿人」として付き合いが始まるが、屈折し孤独癖を抜け出せない老女と、ナイーブなあかりとの関係はちぐはぐ。▼しかし、地縁血縁の濃厚な人間環境が、他人と距離を保つ都会の空気を包み込んでいく展開は意外と速く、これから恋もはらんでいきそうなストーリーは、結末もあらかた想像は出来る。▼にもかかわらず、一見ありきたりのテーマのこのドラマが魅力的なのは、脇役陣がすごく充実していることだ。故郷の養父母、下宿の同居人、近所の住人、鰹節会社の従業員。皆上滑らず、不思議な実体感を漂わせている。▼テレビドラマの草創期、「スチャラカ社員」で藤田まことらのお茶くみ役でスタートした富司純子が、これほどの大女優になるとは想像もつかなかった。瀧本美織も、それこそ楽しみだ。(E)