「ドウのドウドウ」と青年は言った。しかし、会社の先輩は「違う」と指摘する。何度も言い直しが命じられたが、青年は「ドウのドウドウ」と繰り返すのみだった。▼こんな思い出話が、多紀郷友会の機関誌「郷友」の最新号に載っていた。青年は1950年生まれの山口喜昭さんで、就職して間もないころの思い出だ。ちなみに「ドウのドウドウ」は、正しくは「ゾウ(象)のドウゾウ(銅像)」。ザ行とダ行が混用された地方特有のなまりだ。▼この文章を読み、「こうろうからろろろとれてきた」を思い出した。かつて丹南中学校で教え、方言について研究していた先生が、生徒に書かせた作文の中で出てきた文だそうだ。さて意味がわかるだろうか。正しく書くと、「講堂からドドドと出てきた」。ここではラ行との混用も見られる。▼昔のこと。「ダーメン」「ギョウダ」と、品書きの書かれた中華料理店があったという話を聞いたこともある。言うまでもなく、「ダーメン」は「ラーメン」、「ギョウダ」は「ギョウザ」。▼時は経ち、なまりを使う人はめっきり減ったが、今でもたまに目にすることがある。過日も、弊社あての投稿に「さどがっかり」とあった。「さぞがっかり」がなまっていたのだ。なまりは国の手形。何となくあたたかいものを感じ、笑みがこぼれた。(Y)