幸せな焼きたての香り
丹波篠山市日置地区の拠点施設「日置ふるさとステーション」でパン店を開いていた地域おこし協力隊員が独立移転したのをきっかけに、パンのイメージが付いた施設で教室を開こうと、同地区まちづくり協議会が家庭用オーブンを導入し、2023年2月に教室を開講した。「『教える』ではなく、みんなで一緒に作る」楽しさと気軽さが人気を集め、今では17人が受講。受講生仲間で佃煮やジャム作り、籠製作などパン作り以外の趣味や得意分野を教え合い、「楽しい」の輪を地域に広げている。
パン作りとの出合いは40年近く前になる。当時は大阪府堺市在住。子どもが小学校に進み、給食でパンを食べるようになると、「家でも焼きたてを食べたい」とねだった。その声に応えようと、駅前にあった教室に通ううち、「焼きたての香り」にはまり、教室の検定で最高位の1級を取るまで極めた。アシスタントをへて、自身がプロの講師に。“転勤族”の夫が赴任する関西の町々の教室でパンの魅力を伝えてきた。
20年ほど前に丹波篠山へ帰郷。長くブランクがあったところに教室の話が持ち上がった。添加物を使わず、国産小麦にこだわり、砂糖、塩、無塩バター、旬の地元の食材など最小限の材料で安心して食べられる作り方を伝えている。「家庭でも出来るパンを紹介しているので、『家で焼いてみたらこんな感じになった』と再度、アドバイスを求められたときはすごくうれしい。試食するときに『もう1個食べようかな』と幸せそうな顔をされているときも」と、笑顔を弾けさせる。「みんなで教え合う仲間が広がり、その一つにパンがある、となればうれしい」。73歳。