無財の七施

2011.01.22
丹波春秋

 昔々、ある王様が、お釈迦様をもてなすため道を万灯で照らそうとした。その準備を見た貧しい老女が、自分も一灯を献じたいと思った。老女は、物乞いで得たお金を投じて油を買った。その日の食事を我慢して一灯を捧げた。▼翌日、万灯はすべて消えた。しかし、老女の一灯だけは赤々と燃え続けていた。お釈迦様の弟子が吹き消そうとしても消えない。お釈迦様は弟子にこう言った。「その灯は消せない。なぜなら、尊い心からの布施だから」。この故事から「貧者一灯」という言葉が生まれた。▼赤貧を洗うような暮らしにあっても、布施をする。なかなかできることではない。しかし、財がなくても、できる布施もあるとされる。「無財の七施」だ。▼やさしく温かいまなざしで人に接すること、やさしいほほ笑みで人に接すること、やさしい言葉をかけること、体を使って人や社会のために働くこと、ともに喜び、ともに悲しむこと、自分の座席や地位を譲ること、雨露をしのぐ場所を分け与えること。これらの7つの行いが「無財の七施」だ。▼「タイガーマスク」があちらこちらに参上している。タイガーマスクになれなくても、ましてや貧者一灯のような行為ができなくても、無財の七施なら、心の持ちよう次第で比較的容易にできる。心がけなければと思う。 (Y)

 

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