兵庫県丹波篠山市の丹波立杭陶磁器協同組合(市野達也理事長)内の組織「丹波立杭窯保存会」(市野晃司会長)が、県の有形民俗文化財に指定(1973年)されている「丹波焼 最古の登窯」の修繕作業を行った。来年開催の大阪・関西万博に合わせて実施する「ひょうごフィールドパビリオン」の一環で、来年5月30日―6月1日の3日間、同登窯で公開焼成を計画。本番に向けて万全な状態にするため、2―8日にかけ作業に励んだ。
文化財のため、「残せる個所は残す」方針で、修繕個所は最小限にとどめた。同登窯の作窯技法も国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に選択(1957年)されているため、伝統的な築窯技法にのっとって行った。
修繕に取り組んだ同保存会は、同産地の伝統工芸士、同組合3役、丹波焼若手陶芸家集団「グループ窯」の計15人で組織。作業には、兵庫陶芸美術館、市教育委員会、立杭陶の郷の職員も協力員として参加した。
初日の作業には約20人が参加。劣化していた焼成室1カ所と、同室の出入り口部分3カ所を解体撤去し、今年6月に数日かけて約1000個を製作した「まくら」と呼ぶ日干しれんが(縦横約17センチ、高さ約18センチ)を組み上げて修繕。縦方向に割った複数本の竹を骨組みに、わら縄で編んでこしらえた長さ約1―2・5メートル、幅約20センチの帯状の物をアーチ状に曲げて土台とし、その上にまくらを積み上げるといった伝統的な築き方で修繕作業を進めた。
現場で指揮を執ったのは、同登窯を代々使い続けてきた市野晃司会長(77)=源右衛門窯=。「われわれは陶器を作るだけではなく、登窯の築窯技法を含む、丹波焼のさまざまな伝統を後世につないでいくことも使命として担っている。若手にしっかりと技術継承していきたい」と話している。
【最古の登窯】 1895年(明治28)に築窯され、今田町上立杭に現存。130年以上を経て現在も使い続けている現役の窯で、全長47メートル、幅約2メートル、高さ約1メートル、燃焼室を9室持つ。2014―15年度に大修復を行い、以後、丹波焼産地のシンボルとして、毎年1回、公開焼成を行っている。