「サッカーのアジアカップ、日本の決勝トーナメントの相手をたどるだけでもカタール、韓国、オーストラリアと、地球を半分くらい回った気分。それに引き換え、野球の『アジア』は日本、韓国、台湾、そこに中国がからむくらいで、世界が狭い」。▼日経のスポーツコラムに元西鉄の豊田泰光氏が書いている。「盛り上がるサッカーを見つつ、はて野球は何で食っていくのかと思った。…お金と時間をむさぼっていては駄目。選手の年棒の1割でも普及に充ててほしい。アジア諸国に道具を配り、OBをコーチに派遣せよ」とも。▼危機感に敏なこの警告に、球界がいかほど耳を傾けるかは知らない。しかし同じ日のどの新聞の紙面にも、力士の「八百長メール」事件の活字が大きく踊った。球界よりさらにさらに狭い世界にどっぷり漬かった角界の話。▼年ごとに不足する力士志願者を、輸入で何とか補ってしのいできた角界だが、もとより土俵そのものを海外に広げることは出来ず、「国技」の名のもとに様々な公的援助の恵に浴したのが仇となって、山積する問題解決を先送りしてきたのが、このていたらくを招くに至ったのは間違いない。▼何事によらず、「狭い世界」は出来得る限り拡げねばならない。新聞業界とて同様。決して他人事ではないと、自戒する。(E)