17、18日に行われる柏原厄除大祭で、数え年42歳の厄年を迎える地元の男性らが参拝者に餅を配る。男性は中学校の同級生で、餅の配布は恒例の行事だ。厄払いに餅を配るのは、同大祭だけではなく、各地にある。▼たとえば、福岡県筑紫野(ちくしの)市のある地域では、厄年の男性が餅をつき、餅に酒肴をつけて夜明け前に道の角に供えて厄を流す。通りがかった人がもらって帰っていいという。餅ではなく、貨幣をまく地域もあるそうだ。▼厄年の人が、厄を分けるために供する餅や貨幣。いわば厄が託されたものを、なぜ人々は喜んで受け取るのか。民俗学者の宮下克也氏は、その理由を「ケガレの逆転」とみる(『民俗学がわかる事典』)。▼馬の糞を踏むと足が速くなる。牛の糞を踏むと力持ちになる、などの言い伝えがあるように、「きたない」と受け止められるものが「ありがたい」ものに逆転する。ある文脈ではマイナスなのに、違う文脈になるとプラスになる。この読み替えに従って、厄が託されたものが、福を招くものに逆転するのだ。何とも懐の深い知恵だと思う。▼柏原厄除大祭のメーンは深夜に行われる青山祭壇の儀だが、これは、厄をもたらす神をていねいにもてなす儀式でもある。厄の神を遠ざけるのではなく、歓待する。これまた懐が深い。(Y)