古き良き昭和を見学 元町医者宅を改修 伝統建築と思い出残す

2025.01.22
丹波篠山市地域注目

モリル夫妻と、見学会に訪れた地域住民ら=兵庫県丹波篠山市内で

アメリカ出身のモリル・ピーターさん(53)と妻のめぐみさん(52)が、購入した兵庫県丹波篠山市内の古民家の改修工事がひと段落したことを機に、近隣住民を対象に見学会を開いた。古民家は築約90年の旧水井医院。住民たちの健康を支えた町医者の邸宅が十数年前から空き家になっていたため、行く末を心配していた地域住民たちは工事中、「どないなりよんの?」とちょくちょく訪ねて来るなど地元の関心事となっていた。そこで、生まれ変わった古民家を地域住民にお披露目しようと企画した。

元中学校長で篠山かるた協会長などを務める水井廉雄さん(72)の生家で、水井さんの祖父で医師だった安達簾蔵さんが昭和10年頃に建てた病院兼自宅。

ピーターさんのこだわりのリフォームにより、複雑な模様のすりガラスやすすけた巨大な梁、桐のたんすにおくどさん、アカマツの板張りの廊下や2階窓の高欄、草わらの繊維が所々に見られる土壁といった昭和レトロの雰囲気がそのまま残されている。

診察室だった部屋は先進的なキッチン、リビングに改装したが、その周囲には検査室や薬品庫、調剤室などの雰囲気をとどめ、当時珍しかった電話機が設置されていた「電話室」と書かれた扉もそのまま残した。

見学会には続々と近隣住民たちが訪れ、モリル夫妻とのおしゃべりや思い出話に花を咲かせていた。年配の見学者は、「子どものころ、この小窓から咳止め薬を受け取った記憶が鮮明によみがえってきた」と懐かしがり、若い見学者は「昭和にタイムスリップしたみたい」と目を丸くしていた。漆喰の白壁には「けんじのあほばか」の文字が。水井さんは、「私が書いたもの。兄貴とけんかした時の名残」と恥ずかしがった。

「古民家はアート」と日本の大工技術にほれ込んでいるピーターさん。「いつか日本の田舎で伝統的な建築の家に住みたい」という夢を抱き、宮大工に弟子入り志願の手紙を送ったこともある。「極力、当時のままの姿を残したかった」「日本の伝統建築の勉強もしたかった」と、業者に丸投げするのではなく、大工や左官、建具職人らの〝アシスタント〟として一緒に汗を流した。

水井さんは、「取り壊そうとしては昔を思い返し、趣のある梁や柱を眺めながら『もったいないなあ』と思っていた」と言い、「日本の伝統建築に素晴らしさを感じ、われわれの思い出も残してくれた」と感謝していた。

モリル夫妻は、「将来の夢として市内でさらに複数の古民家を購入して、日本の伝統建築の雰囲気を壊さないようリフォームし、国内外の移住者支援につなげたい。古き良き地域コミュニティーの良さも守りつつ、町ににぎわいを取り戻すお手伝いができたら。大好きな丹波篠山のファンを増やしていきたい」とほほ笑んでいる。

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