アクアリウムとアートが融合した神戸市の都市型水族館「アトア」で、兵庫県内では丹波市でしか生息が確認されていない淡水魚「ホトケドジョウ」の展示が始まった。同館の飼育員が同市内でホトケドジョウの保全活動に参加している縁で実現。館内のバックヤードで飼育、繁殖にも取り組む。飼育展示課の東口信行課長(45)は「絶滅危惧種を普及啓発したい。保全のためにできることが増えてくるはず」と期待する。
東口課長は「地元の生物保全は水族館の使命」と、およそ10年前に、有志らが生息地の保護活動に取り組む「丹波地域のホトケドジョウを守る会」の活動に加わった。毎月、個体数や水質の調査などに励んでいる。
東口課長は、絶滅のリスク回避につながる「生息域外保全」の一つとして同館での展示、飼育を発案。「コウノトリと同じ。生息域内で絶滅しても、生息域外で養殖した魚を川に放てば、個体群の復活につなげられる」と重要性を説く。
展示に向け、同館内で一昨年から飼育に取り組んできた。環境に慣れさせるための「メンテナンス」(東口課長)として屋上で四季を感じさせながら人工飼料を与え、寄生虫による病気の治療も行った。現在、60匹ほどを飼育している。
先月から「探求の回廊」と題したギャラリーの水槽内で約20匹を展示。国産淡水魚の展示は2021年の開館以来、初めてという。全長5センチほどで口ひげのある愛らしい表情が特徴で、来館者から「かわいい」と好評を得ている。今後、館内で同会の保全活動内容や、生息域内・域外保全の意義などを伝えるパネル展示も考えている。
東口課長によると、国内の生息地は丹波市が最西端という。「多様な淡水環境が健全な状態で残っている。この自然環境を郷土の誇りとして感じてもらえれば」と話す。
入館料は大人2600円、小学生1500円、幼児500円、3歳未満無料。営業時間は午前10時―午後7時。年中無休。