ハーバード大の人気教授、マイケル・サンデル氏が同大と上海の復旦大、それに東大など東京の学生をつないだ「大震災特別講義―私たちはどう生きるべきか」というNHK番組は大変興味深かった。東京からは女優の高畑淳子さん、作家の石田衣良氏らも討論に加わった。▼最も印象的だったのは、ハーバードの女子学生が、礼節を保って行動する被災地の人達を「人間として誇りに思う」と讃え、「世界の人々に与えた感動が将来、コミュニティの境界を広げ、国と国との関係を変えていくことにつながるのでは」と話したこと。▼そうまで言われると、面映い気もする。非常時でのあのような整然さは日本では当たり前のことだし、確かにすばらしいが、背後には、「皆と違うことをしない」という自己規制があり、局面によっては多様性を欠くという問題もはらんでいる。▼もう一つ、「原子力開発を今後どうするか」というテーマでは、高畑さんが「文明は進歩ばかり考えるべきでない」と発言したが、「様々の危険を克服してきたのが人類の歴史」「発展途上国のことも考えると」といった推進論の方が多かった。▼しかし現実論に絞って考えても、原子力は低コストのエネルギーとは決して言えない。これだけ揃った若い知性の間で、もう少し議論を掘り下げてほしかった。(E)