非常事態の福島第1原発1号機への海水注入を中断したのは、斑目・原子力安全委員長が「再臨界の可能性がある」と言ったから、「いや、私は可能性がゼロではないと言っただけ」などと責任をなすりつけ合っていた問題。実際には、現場の吉田所長の判断で中断はしていなかったとか。▼「官邸から待ったがかかっているから」との本社の指令にもかかわらず、注入し続けた所長の気骨を評価したいが、それにひきかえ原子力安全委員会の事なかれ主義は、怒り心頭に発する。▼同委ホームページで事故発生以来の会議録を読むと、この期に及んでも、委員たちがいかに大過なくすまそう、責任を逃れようと汲々としている様子が手に取るようにわかる。▼例えば3月28日。回りくどい発言をかいつまむと、「この表現はいたずらに国民に不安をかきたてるので、こう変えてほしい」。いつも当局の原案を容認するだけの彼らの助言とは、こういうものばかり。福島の子供たちの年間放射線許容量の20ミリシーベルトへの引き上げもこんな調子で決まった。年俸1650万円。▼一方、3月末に元安全委員長や元原子力学会会長ら名だたる学者らが「国民に深く陳謝」すると共に「今こそ国内の全知を集めて総合的、戦略的な対応を」と政府に緊急提言したのは、黙殺されたままだ。(E)