農業者限定で家賃割引き 有志が民家取得、農の担い手誘致 栽培技術も指南へ

2025.07.14
丹波市地域地域注目

住居を用意し、下三井庄での就農を呼びかける、「担い手の会」の鴻谷さん(左)と細見さん(右)=兵庫県丹波市春日町下三井庄で

家を安く貸し、栽培技術を教え、農機も貸すので、うちの村の農地を守って、日役の戦力にもなって―。兵庫県丹波市春日町下三井庄の有志が、農業で生計を立てる人を村に呼び込もうと、農業者限定で家賃を割り引くユニークな戸建て住宅の賃貸サービスを始めた。将来にわたり、山と田畑が広がる農村景観を守ろうという試み。「担い手の問題で悩む地域の参考になれば。農家を誘致し、成功例をつくりたい」と張り切っている。

同集落にある木造瓦ぶき2階建て7SDK、農業倉庫、農地付きの物件。所有者が手放す意向があるのを、同地区農地・水・環境保全向上活動の会の事務局、細見勝さん(64)が聞きつけ、近所で飲食店と宿泊施設を営む鴻谷佳彦さん(47)と地域に喜ばれる活用方法を模索。2人で「下三井庄農業担い手の会」をつくり、物件を取得し、農家を志す人の誘致に使うことにした。

月額7万4800円の家賃を、就農1年目は2万5000円値引き。住人が市の「認定新規農業者」になれば、市の制度で2年間、市から半額家賃補助を受けられ、本人負担は3万7400円になる。入居条件は、農業をすることや、自治会に加入し、地域活動をすることなど。

内観。リフォーム済みで即入居できる

5年前に農家を対象に将来の農地の耕作意向を尋ねたところ、高齢を理由に離農し、後継者の見当がつかない農地が、向上活動の会の国の多面的機能支払い交付金対象面積の4分の1、8ヘクタールあった。何も手を打たなければ、耕作放棄地になる可能性があり、「誰が農地を守るのか」という問題が近い将来生じる。高齢で離農する人は日役への出役も難しくなるため、地域で共に汗をかく若い力が必要、と2人は考えた。

入居者は、丹波市立農の学校の学生、卒業生を想定。米、ナス、丹波大納言小豆、丹波黒大豆などの作物は、集落内に栽培名人がおり、これら先輩から指導を受けられる。また、農地を借りたい、農機を借りたいなどの相談に細見さんが、生活相談や生産した農作物の販路探しなどの世話を、顔の広い鴻谷さんが担当し、入居者をサポートする。

細見さんは「山を含め、みんなで守って来た里山景観を、これからも維持したい」と言い、鴻谷さんは「農業に挑戦しやすい環境だと思う。住居を複数人でシェアしてもらうのも大歓迎。下三井庄に若手の担い手が増えることを願っている」と、入居を呼びかけている。

農業者を最優先するが、希望がない場合は、家族連れなどに貸す。その際、家賃補助はない。同自治会は116戸中、24戸が移住者と、移住者が多い。

問い合わせは同会(電090・4034・8783)。

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