兵庫県丹波篠山市は、同市黒岡にある中核病院、兵庫医科大学ささやま医療センターについて、同医大(同県西宮市)が経営移譲協議を進めており、にしき記念病院を運営する医療法人社団「みどり会」(丹波篠山市西谷、以下、にしき)に対して優先交渉権を付与し、今後両者で交渉を進めていくと発表した。交渉が順調に進めば今年秋ごろにも合意し、来年4月か、夏ごろをめどに経営を移譲する見込みという。一方、医大も取材に対し、にしきと経営移譲に関する協議を進めていることを認めた。同日、にしきの病院長でもある井手通雄理事長(75)が記者会見し、経営移譲されれば規模の縮小などは行わず、医療体制や職員の待遇も含めて、医療センターの現体制を維持する意向を示し、「医療センターがなくなると丹波篠山の医療はひっ迫するため、今の体制は維持しないといけない。市、医大、医師会などと協力しながら頑張りたい」と意欲を見せた。
同センターは6診療科(内科・総合診療科、小児科、整形外科、麻酔科、放射線科、リハビリテーション科)があり、稼働病床数は94床。非常勤医師を除くスタッフは320人。併設のささやま老人保健施設や居宅サービスセンターも含めて移譲の予定で、にしきとの具体的な協議はこれからという。
にしきは、15診療科(内科、呼吸器内科、整形外科、眼科、耳鼻いんこう科、心療内科、脳神経外科、循環器内科など)があり、病床数は48床。非常勤医師を除く職員数は71人。
センターの運営について、市と医大の基本協定がきょう13日に満了を迎えるため、スムーズな移譲につなげることを目的に来年3月末まで延長する。協定締結時から診療科目数や稼働病床数が変わっていることから、費用負担や診療科目などの条項は今後、市と医大で協議し、必要に応じて見直すという。
市役所で開いた会見で井手理事長は、「市民に安心していただくために、現医療体制の堅持と、今以上の救急体制の充実を図りたい」と語り、診療科は、にしきとの連携も視野に入れ、整形、リハビリ、総合医、小児科を中心とした体制にする意思を示した。
また、人口は減少するものの引き続き、高齢者医療が重要になることを指摘した上で、「高齢者は骨折も多く、整形の手術ができ、リハビリもある医療センターの存在は非常に大きい。絶対に今の体制は残さないといけない」と移譲に手を上げた理由を語った。
また、会見に臨んだことについては、「『どんな病院にするのか』『規模を縮小するのか』など、さまざまな不安が出ると思うので、『縮小せず、今の体制を維持する』ということを伝えないといけないと思った」とした。
現状、赤字になっているセンターの経営については、「にしきをモデルにして、経営していける自信がある」とした。
医大と交渉を進めながらセンター職員の意向確認を行うといい、医大には、「最長3年間は必要な医師を置いてほしいと伝えている」と話した。
酒井隆明市長は、「交渉に手を上げられた病院には、いずれも市の医療を担おうとされたことに感謝しかない。長年尽力いただいた医大には市の医療をこれからも守っていけることを第一に考えて交渉に臨んでほしい」とした。
一方、医大は取材に対し、「長年にわたり地元の医療・介護に貢献してきたが、協定期間が終了することを踏まえ、市とも相談し、丹波篠山地域で引き続き、安定的に医療・介護を提供し続けるため、にしきなどと経営移譲に関する話し合いをすることになった」とし、「今後の取り組み方針、経営移譲に関する考え方などを総合的に検討した結果、にしきと具体的な協議を進めることになった」とした。また、市民に対し、「医療・介護に空白期間が生じることがないよう、市、県の理解、支援も頂きながら、迅速かつ精力的に進める。皆さまには、ご不便、ご心配をおかけするが、協議がまとまるまでしっかり貢献していく」と理解を求めている。
市によると、同センターの近年の経営状況は、コロナの補助金を除くと年間約4億円の赤字となっているという。
これまで市は協定に基づき、年間1億2600万円の運営補助金や施設整備への補助金、用地の無償貸与、土地交換などに応じ、計59億2783万円を負担している。























