母親と子どもとの関係は密接。それに比べて子どもとの関係が薄い父親にも、出番の時がある。子どもが荒々しいことを望む時だ。父親は突然飛び上がったり、猛スピードで走ったりする。すると、子どもは大喜び。父親はそのとき初めて自分がいてよかったと実感する。▼父親に出番の機会を与えるのは、母親だ。巧みに子どもの興味を父親に持っていき、母親はすっと消える。すると父親と子どもがすんなりつながるそうだ。子どもにとって父親が存在感を持つかどうかは、母親の演出次第というわけ。▼以上は、キツネの世界のこと。獣医の竹田津実さんによると、キツネのオスは、人間同様に父親と夫の役割を果たしているらしい。それにしても人間の父親と似ている。▼父権喪失が言われて久しい。それを憂える女性の遺伝学者、柳澤桂子さんは、父親は一家の重りになるべきと説く。そのためには母親が子どもに対して父親が働いてくれるから生きていけることを納得させ、子どもの前で父親を決してけなしてはいけないとアドバイスする。言い換えれば、父親を持ち上げる母親の演出が肝心というわけ。▼先のキツネの続き。竹田津さんによると、父親の存在を示す演出を母親ができないと、父親は蒸発してしまうらしい。さて人間は。きょうは「父の日」。(Y)