戦後80年の節目を迎え、ほとんどが戦争を知らない世代になりつつある。戦没者遺児が中心となる兵庫県丹波篠山市遺族会の会員数は減り続け、まちづくり地区単位の19地区中、この2年で3地区が解散。それでも、次世代に平和の尊さを伝えようと、今年は若者に参加を呼びかけ、「平和のつどい」を開催した。高齢化や会員減少の課題を抱えながらも、活動を工夫し続けている市遺族会の現状と取り組みをまとめた。
◆3地区が解散
2008年度に1430人いた会員は13年度に1279人、18年度に1093人、今年度は716人と、この17年間でほぼ半減した。遺族会は地区ごとに忠霊塔の掃除や維持、追悼式などを行っているが、市内の3地区が会員減少や役員のなり手がいないなどの理由で今年度までに解散。ある地区の代表は「地区に1つある殉国碑の管理をどうするかの課題が残る。費用を負担するにも会員の減少で1人の負担が多くなる」とこぼす。
市遺族会は例年10月に市が主催する「市戦没者追悼式」に参加。終戦の日の8月15日には「市追悼慰霊祭」を行っており、今年も遺芳殿(同市沢田)で遺族会役員と来賓計20人ほどが参列した。
また、毎月8日に遺族会館で「祥月法要」を市仏教会の協力で行い、法要前に地区の持ち回りで周辺を清掃したり、草刈りをしたりしている。
◆位牌位置データ化
3年前、市遺族会は遺族会館そばの老朽化した遺芳殿(1943年創建)を改修した。遺芳殿は神戸連帯区(8市3郡)の戦没英霊3万2000余柱がまつられている。毎月の祥月法要時に参拝することができる。
市遺族会は戦後80年を機に、遺芳殿にまつられている同市出身者を中心に1858柱の位牌の位置をデータ化。俗名と戒名、位牌の位置を載せた資料を設置した。参拝者が戦没者の孫やひ孫の代になり、位牌の位置が分からない遺族が増えてきたためでもある。
◆支部ごとに参拝
市遺族会は篠山、城東、多紀、西紀、丹南、今田の6支部ごとの活動もしている。
戦後80年を機に多紀支部は、線香とろうそくのセットを配布。城東支部は7月24日に例年より多い10人の僧侶を迎えて磯宮八幡神社(同市日置)境内にある忠霊塔で慰霊祭を行った。同支部も年々、会員が減少。吉田篤弘支部長は「遺族会の規模が今後、どうなるか分からないが、できるだけ手を合わせ、子どもに話をしていきたい」と話す。
◆子ども含め参拝
まちづくり地区単位の「地区」で活動している所もあり、大山地区では例年、自治会長会や各団体と実行委員会を組織し、大山小学校の児童を招いて「平和記念式典」を行っている。
今年も8月2日、大山ファミリーの郷近くの忠魂碑前(平和の広場)で行われ、子ども約30人を含む計約100人が参拝した。児童が平和の誓いを述べたり、非核平和都市宣言を朗読したりした。
同地区の西垣重夫遺族会長は「今年も多くの方と、この場所で平和を考える時間を持てて良かった。平和を思う8月にしたい」とあいさつした。
◆継承の担い手
戦後80年。戦争体験を語る人は少なくなり、その体験を聞いた人も減りつつある。戦争の悲惨さと平和の尊さを誰が語り継いでいくのかが一人ひとりに問われている。
市遺族会の石川英昭会長は「戦没者の子や孫でさえ少なくなってきている。一般の人はなおさら関心が薄くなる。今の平和を当たり前とは思わず、平和に感謝し、どうしたら平和を続けられるかを考えてほしい」と話す。



























