石川県能美市にあった、兵庫県丹波市青垣町東芦田出身の俳人、細見綾子の句碑が綾子の生家に移設され、関係者や地域住民、俳句愛好者ら30人ほどが集う中、除幕式が開かれた。綾子の長男・太郎氏(故人)の妻、澤木くみ子さん(65)=東京都=が句碑の所有者から買い取り、綾子の生家を管理する丹波市に寄付。「古九谷の深むらさきも雁の頃」と刻まれた句碑が前庭に据えられた。近くの高座神社にも綾子の句碑があり、出身地の東芦田に2つ目の句碑になる。
高さ75センチ、幅130センチ、奥行き30センチ、重さ650キロほど。赤みがかった石で、綾子が揮毫した句が刻まれている。
澤木さんによると、句碑は1984年(昭和59)、綾子と、夫で俳人の沢木欣一に師事した新田祐久氏(故人)が、石川県能美市の自宅庭に建立した。
澤木さんは全国にある綾子の句碑を調べていたが、今回の句碑は新田氏が自宅庭に建立していたことや、すでに鬼籍に入っていたこと、現在は空き家になっていることなどから、詳細をつかむのに時間を要したという。綾子を広く顕彰するため、新田氏の遺族に相談して句碑を買い取った。
石川県南部で生産される九谷焼のことが句に盛り込まれていることから、同県で移設先を探したものの見つからなかったという。綾子の生家がある丹波市に打診し、移設が決まった。
受け入れ側の地元、芦田自治会の住民でつくる句碑建立実行委員会(小寺昌樹委員長)が除幕式を開いた。小寺委員長(84)は、「多くの力を賜り、石川県から句碑がやって来た。当地に2つ目の句碑となり、ぜいたくなこと」とあいさつ。澤木さんは「綾子の地元の方が、(句碑の移設を)喜んでくださったのが何よりうれしい」と話していた。
俳句結社「栴檀」同人の清水雅子さん(岐阜県、丹波市出身)が句碑に刻まれた句について、「季語は『雁の頃』で、雁は10月ごろからの渡り鳥。綾子先生は金沢の美術館で古九谷を見られ、その深紫色に心を引かれられた。古九谷の深紫色が、雁が渡って来る少し寂しい季節と響き合い、先生の心にすとんと落ちたのだろう。理屈の俳句ではなく、先生ならではの感覚で出来た素晴らしい句」と解説していた。




























