健やかな老

2011.09.17
丹波春秋

 人間はいかに生きるべきかを具体的に説いた哲学者、森信三氏は、90歳を迎えてのインタビューで、80歳になったのを境に日常生活での俊敏さを何より心がけたと答えている。日常の雑事雑用をいかに俊敏にさばくか。そのことを第一に取り組んだという。▼「80歳にして俊敏に」というのだから感心するが、もう一つ、脱帽するのは90歳になっても「立腰(りつよう)」を通していることだ。朝起きてから夜ねるまでいつも腰骨を立てて曲げない。立腰は健康に効果があるだけでなく、人間が主体的になり、生きる力がわいてくるという。これは科学的にも証明できるらしい。▼私たちは常に重力を受け、地面の方に押されている。この力に逆らって立つには背骨や腰の周りの筋肉を収縮させないといけない。筋肉が緊張すると、その信号が脳に伝わり、脳を目覚めさせる。▼脳を目覚めさせる刺激は前頭前野に伝わる。前頭前野はいわば脳の司令塔。刺激が前頭前野に伝わることで、その作用として感情が制御され、今やろうとしていることに精神が集中するという。▼明日は敬老の日。敬老の念を改めて認識する機会だが、やがて来る自らの老を考える機会でもある。心身ともに健やかな老を迎えるためにも、ともすれば猫背になりそうな姿勢を正さねばと思う。(Y)

 

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