「丹波いっぷく茶屋亭」接客係 山本喜久代さん(丹波市)

2025.11.30
たんばのひと

くの一「会いに来て」

北近畿豊岡自動車春日和田山道路北行きにある簡易パーキング「氷上パーキングエリア」(丹波市氷上町本郷)で、夫の上(のぼる)さん(71)と営む、モーニングとランチを提供する飲食店「鴨内さ久ら庵丹波いっぷく茶屋亭」で、くノ一に扮し、接客に励んでいる。

市観光協会が指定管理をする施設の店子。入居時の打ち合わせで、東映京都撮影所内の食堂の責任者をしていた夫の経歴を誘客に役立てようと、店内を「映画村の忍者屋敷風に装飾する」案が出た。アイデアが具体化しないまま開店日を迎え、「行きがかり上、私だけが忍者になった。やめたいんやけど」と苦笑する。

「何で忍者なんや」と聞かれ、会話の糸口になっている。写真を撮りたいとせがまれる。「忍者らしいポーズは、お客さんに教えてもらった」

店の名物にと、「忍者うどん」を開発。天ぷらうどんの底にとろろご飯を隠したアイデアメニュー。「一椀で二度おいしい」と好評を博している。

大阪市東淀川区と二拠点生活。「茶屋亭」(火―木曜の午前7時―午後2時営業)を始め、週のほとんどを丹波で過ごす。日本書芸院の師範。日本教育書道連盟七段の腕前。およそ25年間、週3日開いている書道教室は休会中。教室生に写真を送ったところ、「先生、忍者ですか」と驚かれた。息子夫婦に姿を見られ「恥ずかしかった」。

出勤は午前5時過ぎ。午前7時に店の外に立ち、トラック運転手らにおにぎりやサンドイッチの朝食を販売する。南下する車が寄れない立地の厳しさは想像以上。「家賃無料でも採算を合わすのが難しい。人に来てもらおうと思って、とにかく一生懸命。会いに来て」。73歳。

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