大書院で「大謡」 市民ら30人が「羽衣」上演 プロと幽玄の響き披露

2025.12.05
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篠山城大書院の広縁で「羽衣」の謡を披露する「篠山大謡」の参加者たち=兵庫県丹波篠山市北新町で

丹波篠山にゆかりの深い伝統芸能「能」の謡を一般市民が複数日の稽古を通して体験し、学びの成果を大勢の前で披露する初イベント「篠山大謡」の本番発表会が23日、兵庫県丹波篠山市北新町の篠山城大書院で開かれた。上演した演目は「羽衣」。市内をはじめ、大阪府や県内から参加した約30人が、プロの能楽師(観世流)の舞と共に幽玄の響きを披露した。

参加者は、男性が黒紋付羽織袴姿で、女性があでやかな着物姿で舞台となる大書院「広縁」にずらりと並び、二の丸広場に集まった観客に向け、練習の成果を響かせた。偶然居合わせた観光客らは、突然始まった大謡に足を止め、約10分間の幽玄世界を鑑賞。スマートフォンで撮影するなどしながら、700年間受け継がれてきた伝統文化を堪能していた。

主催の実行委員会(山下由晶実行委員長)によると、江戸時代、篠山では10人に1人が能の稽古をしていたそう。「“文化の記憶”を現代によみがえらせ、再び“謡のまち”としての息吹を取り戻したい」と企画した。

能楽観世流シテ方の上田宜照さん(37)=同県西宮市=を講師に、先月下旬―今月中旬、ホロンピアホテル宴会場で3度、稽古に励んできた。

舞台を終えた井本美由紀さん(60)は「緊張したけれど、大書院で歌えるぜいたくさに感動した」とほほ笑み、「能楽は全くの未経験で、練習はとても楽しかった。コーラスをやっているが、発声の仕方が大きく違っていて新鮮だった」と話していた。

山下実行委員長(56)は、「世間には『農』の篠山として広く知られているが、これからは『能』の篠山としても盛り上げていきたい。今回のイベントを通して、新しい丹波篠山の可能性を感じることができた」と笑顔を見せていた。

 

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