暗記力、体力、集中力、礼儀など、さまざまな力が養える「競技かるた」を始めたい子どもたちや初心者を対象にした兵庫県丹波篠山市の「篠山かるた教室」が今年、開講から50年を迎えた。2013年に日本一の名人位に輝き、3連覇も達成した同市出身の岸田諭さんも幼少期に通った教室で、半世紀の歩みの中、多くの有段者を輩出。今も小学生から大人までの約20人が参加している。地方では数少ない競技を学べる場として認知が広がり、近年は市外から参加する人も増加。外国の人も参加している。毎週水曜日の夜に丹波篠山市民センター(同市黒岡)で開かれている教室を訪ねた。
「バシッ」―。百人一首の一文字目が読み上げられた時点で、子どもたちが一斉に札を払う。上の句の一音で下の句が書かれた札が分かり、しかも、その位置を把握しているのだからすごい。
「さまざまな力がつくし、絶えず相手との真剣勝負で、負けて悔しいときもある。勝負を避けがちな世の中で、悔しさを体験することも大事」。教室を主催する篠山こどもかるた会の水井廉雄会長(72)が語る。
「みんな、ちょっと札流ししよか」
子どもたちは、水井会長が出す取り札(下の句)を見た瞬間、上の句の先頭の数文字(決まり字)をつぶやく。合っていれば、次の札へ。そうして、100枚全てを言い終えるのに要した時間は、6年生で50秒程度だった。衝撃の暗記力だが、水井会長は、「続けていたら、誰でもできるようになる」と笑う。
1962年(昭和37)に発足した「多紀かるた協会」(現・篠山かるた会)が、より競技かるたの裾野を広げようと、76年(昭和51)に教室をスタート。多くの子どもたちがかるたに触れ、名人をも生み出すゆりかごになった。
教室で腕を磨いている小学校6年の酒井美羽さん(12)は、「もともと歴史が好きで、平安時代に興味があった」と言い、「札を払えたら気持ちいい」とほほ笑む。
最盛期には地元を中心に30人ほどの教室生がいた。コロナ禍で一時、流れが途絶えたが、コロナ後には復調。さらに丹波市や三田市、朝来市など市外からの参加割合が高くなった。
その理由の一つは、県内では南部にかるた会が集中していること。そのため、近隣市から最も近いかるた教室として選ばれている。もう一つは、競技かるたを題材にした漫画「ちはやふる」だ。映画やドラマにもなったほか、昨年も新作ドラマが放送されている。
中学校1年の紀こころさん(13)は、「漫画を読んで、めちゃくちゃ面白くて。自分でもやってみたいと思った」と、昨年から教室に参加。「やればやるほど面白く、歴史も好きになった」と目を輝かせる。
アメリカ・カリフォルニア出身のケレン・ワイルドさん(26)も昨年から参加。朝来市で英語教師として勤務している。「アメリカで『ちはやふる』を読んで、かるたが好きになった」。来日後、朝来市から最も近い篠山の教室を見つけ、車で通っている。「スポーツ、芸術、歴史が融合しているところが楽しい」とにっこり。「難しいけれど、粘り強く上達するよう、努力していきたい」と気合を入れる。
半世紀にわたって続く子どもたちや初心者の鍛錬の場。いまや市域だけでなく国境も超えて学ぶ人々がいる。水井会長は、「50年。よく続いてきたと思う」と言い、「かるたをしたい子どもたちがいる限りは、私も頑張らねばという思い。いつかまた、名人やクイーンが生まれてくれたらうれしい」と期待を寄せている。




























