兵庫県丹波市山南町和田の和田地域づくりセンター前面に、地元の名所などをポップに描いた巨大壁画がお目見えした。制作したのは、東京都在住の若手アーティスト、荻原眞也さん(28)。同地区内の農家民宿に20日間滞在し、地元の人たちと交流を深めながら壁画を完成させた。
大きさは横8・5メートル、縦4・5メートル。地面から下辺まで約3メートルの高さがある。和田のシンボル「岩尾城跡」、薬草薬樹公園のマスコット「神農炎帝」、山の動物、荻原さんのモチーフキャラたちが楽しそうに描かれ、岩尾城までの地図も入っている。和田小学校の校門前にあり、小学生たちも毎日目にする新たな名物が誕生した。
同センターの外壁を塗り直すことになり、同振興会コミュニティ推進員の永井隆文さん(71)が「工事のための足場を活用して、壁に絵を描けへんやろか」とひらめいたのがきっかけ。同振興会で「壁画作成プロジェクト」を立ち上げたものの、誰に描いてもらうのかが決まらなかった。
荻原さんとつないだのは、丹波市出身で、市内でフットサルスクール「ペジサル」を開いている小山拓希さん(28)=神戸市=、渡邊祐輝さん(同)=大阪府豊中市=と、小山さん、荻原さんとそれぞれ大学や前職の関係でつながっていた賀来知宏さん(28)=神戸市=。ペジサルの交流サイト(SNS)で「壁画を描ける人募集」の呼びかけを見た賀来さんが荻原さんに紹介した。
プロジェクトは「制作費の代わりに、滞在中の食費、生活費などを出す」という一風変わった報酬。荻原さんは、壁画がこれまで手がけたことのない大きさだったことに魅力を感じ、挑戦を決めた。また、出身も東京で、「田舎」に滞在することにも引かれたという。
滞在先は、同町小野尻の三角修一さん(82)と妻の三紀子さん(81)が営む「小野尻庵」。三紀子さんが毎日、手料理を用意し、修一さんとは酒を酌み交わしながらいろいろな話をし、家族のように過ごした。荻原さんは「ご飯は全部おいしかった」と言い、三角さんは「孫が帰ってきたよう。楽しい話ができて活力がもらえた」とうれしそうに話す。
ただ、制作は順調満帆とはいかなかった。「思っていたより壁が大きかったのと、ごつごつしていて、なかなか塗り進まなかった」(荻原さん)。当初は1週間―10日で描き終える予定だったが、倍の時間を要した。雨が降った後は、アクリル絵の具が流れてしまい、完成を間近にして広範囲に塗り直しをしなければならなかった。作業の進捗を見かねて、同センターの外壁塗装を請け負った加藤正巳さん(67)、コミュニティ推進員の永井さんも“アシスタント”を買って出た。夜はライトを照らし、荻原さんはヘッドライドを着けて作業したこともあった。
昨年12月28日、東京帰省の電車時間ぎりぎりに完成し、足場も外れた。荻原さんは「地元の皆さんが優しかったことが一番印象に残っている。描いている途中も、近所の人たちが声をかけてくれてうれしかった。これからもたくさん丹波に来たいと思えるような充実した期間だった」と笑顔を見せた。



























