「人は情の下に住む」

2013.03.07
丹波春秋

 江戸時代の民謡集「山家鳥虫歌(さんかちょうちゅうか)」に、「鮎は瀬につく 鳥は木にとまる 人は情(なさけ)の下に住む」とある。地方的、農民的な素朴さがあるといわれる同集。「人は情の下に住む」は、世俗に生きる庶民の姿を端的に表現している。▼宮崎に、情を前面に出した新聞がある。「みやざき中央新聞」。ローカル紙ではなく、週1回の全国紙。講演会を取材し、おもしろかった話、感動した話、ためになる話の要旨を掲載している。▼同紙の水谷編集長は、第1号の社説に「情報は、報道の『報』の上に『情』を乗せている。『情』とは人間味のある心、思いやり、優しさ。情報は常に『情』を乗せて発信したい」と書いた。情を盛り込んだ情報を大事にするという姿勢が、全国の読者の共感を得ている。▼なぜか。水谷編集長はその問いに「現代人は人の情に飢えている。…『いい話』は、時代が求めている」と答えている(日経新聞昨年7月21日)。人は情の下に住むもの。しかし、生きるのに息苦しいほど、人の世の情が薄れているということか。▼「ありがとう」のエピソードを全国公募した「丹の里ありがとう大賞」の表彰式が9日、丹波市で開かれる。「ありがとう」の言葉が各方面で注目されているのも、「ありがとう」が有り難き世になっているためか。(Y)

 

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