つつましく振る舞う

2013.04.13
丹波春秋

 日本では、赤ん坊と老人とに最大の自由とわがままが許されており、幼児期を過ぎると共に拘束が増してゆく。そんな指摘をした本『菊と刀』が出たのは、約70年前。さて現代。老人はさておき、赤ん坊や幼児期の自由やわがままは今も許容されているか。されているなら、どこまでか。▼柏原高校の入学式で、来賓あいさつをした谷水同窓会長が、新入生の保護者に「今日から高校生。もう小学生や中学生ではない。雨の日に校門まで車で子どもを送るのは甘やかしだ」と呼びかけた。雨の日、高校生のわが子を車で送る。自由とわがままの許容が、幼児期を通り越して、引き延ばされている一端と言えなくもない。▼谷水会長は「送るにしても、柏原駅か南多田の交差点にまでしましょうよ」とも付け加えた。学校近くで車から降りて歩く高校生。それなら、まだしも、つつましい。▼『菊と刀』を著した米国の文化人類学者、ベネディクトは、日本を「恥の文化」の国と見た。世間に対して恥ずかしくない行動をとる。それが日本人の規準になっているとした。恥の文化から生まれた行動の美学の一つが、つつましく振る舞うこと。無遠慮には、はしたなさがつきまとう。▼谷水会長と同様、車で送るのは、せめて学校の近くにしたいものだと思う。校門までは、つつましさに欠ける。(Y)

 

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