30年ほど前、長崎に原爆を落としたB29が展示されているアメリカの博物館を訪ねたときの出来事を作家の加賀乙彦氏が書いている(「悪魔のささやき」)。

2006.12.27
丹波春秋

30年ほど前、長崎に原爆を落としたB29が展示されているアメリカの博物館を訪ねたときの出来事を作家の加賀乙彦氏が書いている(「悪魔のささやき」)。アメリカの小学生たちが、ビデオで映されたキノコ雲を見て、歓声をあげて拍手し、引率の教師が得意げに説明していた。▼博物館の展示ボードには、「原爆を作ったのは世界的な偉業」と書かれていたという。こうした話に接すると、私たち日本人は悲しくなり、憤りすら覚える。同時に、約40万人といわれる原爆死没者を出し、今も苦しんでいる被爆者がいるという事実を日本人として忘れてはならないと思う。▼小泉首相の靖国参拝についての共同通信社の調査によると、「参拝してよかった」とする51.5%の賛成派のうち、「参拝は他国によって影響されるべきではない」とする人が半数を超えた。▼中国や韓国の批判に対する反発が背景にあるのだろうが、歴史的事実を知った上での反発なのか、あやしい。日本の戦争犠牲者は300万人と推定されるのに対して、中国での日本軍による犠牲者は1千万人を超えるといわれる。▼「しかし、そうしたごく基礎的な事実すら知らない日本人が圧倒的に多い」と、評論家の立花隆氏は日本人の無知ぶりを嘆いている。これでは、原爆の非人間性を知らない米国の小学生と同じだ。(Y)

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