2番

2012.03.07
丹波春秋

 昨年、「第九」公演の合唱に参加した際、練習で指揮者の新通(しんどおり)英洋氏が「アルトの響き具合で合唱団の水準が判断できる。アルトの人は『高い声が出せないのでアルトに入った』とは絶対に思わないで」と話された。以来、合唱を聴くたびにこの言葉を思い出すが、アルトがきれいだと確かに曲が生きてくるようだ。▼ブラスバンドに入っていた中学生時代、華やかなトランペットに対して、自分が吹くバスはリズム音ばかり。精いっぱい大きい音を出して目立とうとしたら、先生から「もっと抑えて」と言われて不満だった。管・弦を問わず、ベースのかすかな音の美しさに気付いたのは、ずっと後になってからだ。▼ソプラノに対するアルト、テノールに対するバスを2番手と言うのは失礼だが、脇役には違いない。しかし、脇役がしっかりしていてこそ芝居が成り立つ。野球でも、バント、ヒットエンドランと器用にこなせる2番が控えていれば、1番打者の機動力が生き、後続の3~5番の得点力も増す。▼2月23日号「てぃー・たいむ」に谷垣友里さんが書いていた、「黒豆を炊く役を『私は2番』と言って断る人があった」という話は奥ゆかしい。ただし、「2番」に「愚か者」という意味があることを、筆者も辞書で初めて知ったけれど、これには異議あり。(E)

 

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