「自由の声」

2012.06.21
丹波春秋

 小紙17日号「自由の声」欄に元柏原中教師の金子宏道さんが、教え子の卒業50周年同窓会に招かれた感想を寄せ、「それぞれ人生の荒波を乗り越えてここにいるのだと思うと、とても自分は教師という立場でものは言えないと思った。…未熟だった新米の教師を育ててくれたのは、この子たちだ」と書いている。▼筆者はこの学年の3年上で、金子先生に2年間、図工を教えて頂いた。その時間だけだったので、当時はこれほど生徒を想い、想われる先生とは知らなかった。ただ、自分の絵が思いがけず郡展出品作に選ばれ、朝礼で先生が笑顔で発表して下さったのを鮮明に覚えている。▼その絵を最近、実家の屋根裏で偶然見つけ、額のガラスが黒ずんでいたのを、知人の画家さんに修復してもらった。金子先生は柏原でその学年の教え子たちと師弟展を開くのが夢とか。▼同じ欄でもう1本、「愛用の道具に父の幻を見る」という大野昶さんの投書は、25年前に88歳で亡くなった元建具職人の父の話。長い間保管してきたカンナやノコをやむなく処分することになった。最後に残った2本の削り台を、「この桜材だけは残しておきたい」と濡れ縁に作り替えながら、自分にももの作りの心が流れているのかと、嬉しくなったという。▼師と生徒、父と子。いずれの話も胸を打つ。(E)

 

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