鈴の鳴る道

2012.09.29
丹波春秋

 東日本大震災で被災した石巻市の小学生たちに元気を届けたいと、篠山市の松田千栄子さんが370個もの「手まりストラップ」を手作りした(9月23日付篠山市版)。手まりには鈴をつけており、「鈴がチリンと鳴るたびに、『遠くからでも応援しているよ』という気持ちが伝われば」という。▼この記事を読み、星野富広さんの随筆「鈴の鳴る道」を思い出した。元中学校教諭の星野さんは、クラブ活動の指導中に首をけがし、手足の自由を失った。電動車いすで移動する星野さんにとって、道のでこぼこは難敵だった。しかし、人からもらった鈴を車いすにつけたとき、でこぼこが楽しいものになった。▼でこぼこを通ると、車いすの鈴がチリンとなる。その音に心が和んだ。星野さんは思った。「人も皆、この鈴のようなものを心の中に授かっているのではないか」。その鈴は、平らな道を歩いていたのでは鳴らない。でも、でこぼこだと、揺れて美しく響く。▼震災を体験した子どもたち。その目の前に広がる道に、震災は数多くのでこぼこをもたらしたかもしれない。しかし、どうか心の鈴の音色の美しさに気づける人になってほしいと願う。▼「私の行く先にある道のでこぼこを、なるべく迂回せずに進もうと思う」(星野さん)。そんな勇気が子どもたちに伝わればとも思う。(Y)

 

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